アフガン再建 自立国家への道筋を
オバマ米大統領は、治安が悪化するアフガニスタン駐留米軍の撤退計画を見直し、二〇一七年以降も五千五百人を駐留させる方針を表明した。過激派の勢力拡大を食い止め自立への道筋をつけたい。
ブッシュ前政権が始めたアフガンとイラクでの戦争終結を公約したオバマ大統領は、一時十万人規模だったアフガン駐留米軍を段階的に減らし、任期終盤の一六年末までに完全撤退させ、アフガンに治安権限を移譲する方針だった。
しかし、反政府勢力タリバンが攻勢を強めている上、過激派組織「イスラム国」(IS)が東部などで勢力を拡大、テロなどによる治安悪化に歯止めがかからない。米軍が一一年末に撤退後、ISが台頭してテロの温床となったイラクの二の舞いになるとの懸念も強まり、撤退方針を転換させた。
米軍は九月、緊急医療援助団体「国境なき医師団」の病院を誤爆、二十人以上の犠牲者を出すなど信頼を失墜させている。いつまでも駐留が続くのは適切ではない。
米軍などによる治安部隊の訓練を急ぎ、過激派の勢力をそぎ、タリバンとの和平を図るよう、アフガンの自立を促したい。
欧州で難民申請する難民には、シリアなど中東とともに、アフガン出身者も目立つ。米調査機関によると、今年初めから八月までに約六万三千人に上ったという。難民問題解決のためにも、アフガンの安定は不可欠だ。
二つの戦争終結を目指したオバマ大統領が掲げた理想は評価したいが、いずれも実現できず、一七年一月に発足する次期政権に持ち越されることになった。大統領選の主要テーマの一つとなるだろう。論戦で議論を深め、出口戦略を探ってほしい。
アフガン軍支援などのため計約一万三千人を派遣している北大西洋条約機構(NATO)加盟各国も駐留計画を見直すなど、米国の方針転換の波紋は広がっている。
日本は〇二年一月のアフガン復興支援会議の開催国となり、これまでに総額約五十七億九千百万ドル(約六千九百五十億円)に上る支援を続けてきた。
アフガンで軍閥の武装解除を指揮した経験から伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授は「日本への信頼感を感じた。日本は米国ができないことを補完する、いい立ち位置にいる」と述べ、非武装でも果たすことができる役割を指摘する。アフガン安定への日本の貢献も考えたい。
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