安保改定60年 多様な脅威に応じ協力深めよ
日米安全保障条約が発効してから、23日で60年を迎える。互いに信頼を高め合う取り組みを続けなければならない。
条約に基づく日米同盟が礎となり、日本は平和と安定を確保し、経済的繁栄を享受してきた。2国間の協力は、安全保障はもとより、経済や文化など幅広い分野にわたる。関係を深化させ、両国の発展につなげたい。
1960年に旧安保条約を改定した際の主眼は、米国による日本防衛義務の明確化だった。旧ソ連の軍事力を念頭に置いていた。冷戦崩壊後、脅威は多様化し、かつ軍事技術の進化も著しい。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮は、様々な弾道ミサイルの発射実験を繰り返している。軍拡を進める中国は、海洋での覇権的な活動をやめない。莫大な予算で、宇宙にも兵器を配備する構えだ。
いずれも、日本の防衛力だけで対応するのは難しい。自衛隊と米軍が連携して、共同対処能力を高めることが求められる。
抑止力の維持に、米国のアジアへの関与は欠かせない。
米軍は4月、グアムに配備していた戦略爆撃機を米本土から展開する運用に切り替えた。爆撃機は、南シナ海の警戒にあたったほか、米韓合同軍事演習に参加し、中国や北朝鮮を牽制してきた。
米本土に拠点を移して以降も、爆撃機は日本周辺で航空自衛隊と合同訓練を行った。演習を重ね、練度を高める必要がある。
重要なのは、日本の役割を不断に見直していくことである。
安倍首相は、新たな安全保障政策について、政府内で議論する考えを示した。政府は、地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の導入を停止した。その代替策が主要な論点となる。
自民党は敵基地攻撃能力の保有を求めている。政府は1956年の答弁で、「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」とし、ミサイル発射が切迫した場合の攻撃は、憲法が認める自衛の範囲と解釈する。
多数のミサイルが同時に発射された場合、今の防衛体制ですべてを迎撃するのは容易ではない。
被害を最小化するため、巡航ミサイルで敵基地を攻撃するという選択肢はあり得る。反撃の手段を持つことにより、抑止力は向上する。日本の役割が増えれば、日米同盟は強化されよう。
「侵略戦争につながる」といった空疎な論議に終始してはならない。政府は丁寧に検討し、国民の理解を広げていくべきだ。
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