米政府が9、10日に初の「民主主義サミット」をオンラインで開く。台湾を含む110カ国・地域が招待されている。
開催にあたり、国務省は「民主主義は偶然そこにあるのではない。われわれが守り、闘い、強化し、改めていかねばならない」とのバイデン大統領の発言を紹介した。
民主主義陣営の指導者として当然の認識である。専制主義の中国による挑戦で国際秩序が脅かされている。この現実を直視し、危機感を共有すべきだ。サミットをそのための場にしてもらいたい。
中国、ロシアは招待されなかった。欧州が多く、東南アジア諸国連合(ASEAN)からは、フィリピン、インドネシア、マレーシアの3カ国にとどまった。
招待の有無で、敵・味方を色分けすることのないよう注意も必要だ。呼ばなかったタイなどに対しては、参加国・地域が声をそろえて民主化を促していくべきだ。
最も重要なのは、台湾が招待されたことである。台湾は中国によって世界保健機関(WHO)などの国際機関から排除される一方、頻繁に、戦闘機などによる中国の武力挑発にさらされている。
民主主義を守り、闘うべき主戦場があるとすれば、台湾にほかならない。民主主義陣営は一致協力し、支えていかねばならない。
台湾の蔡英文政権は、サミットにデジタル担当政務委員(閣僚)で、新型コロナウイルス対策で活躍したオードリー・タン氏らを出席させると発表した。中国は台湾の参加はもちろん、サミットの開催自体に猛反対している。
香港で「一国二制度」の国際公約のもと、住民が享受した自由や民主的な制度は、昨年6月に施行された国家安全維持法により、あっという間に蹴散らされた。
言論が封じ込められ、自由を求める人々は弾圧を受け、安全な居場所を失った。だが、民主主義を守り抜けなかったことによる損失はそれだけにとどまらない。
世界貿易機関(WTO)の委員会人事で、香港が中国の意向に沿って台湾の議長選出を阻んでいたことが明らかになった。専制主義陣営が増強されたに等しい。
台湾で同じ轍(てつ)を踏んではならない。中国を抑止するためにも、台湾の民主主義を守り抜く意思を明確に打ち出すべきだ。同時に、中国の圧力で台湾が孤立しないよう協力することも重要である。
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