やっぱりトランプが良かった 論説委員長・乾正人
街に空襲を予告するサイレンが鳴り響き、人々はシェルターや地下鉄の駅に駆け込む。
日本や欧州で77年前に終わったはずの悪夢が蘇(よみがえ)った。
遠く離れたウクライナでの惨劇に、われわれは同情するだけでどうすることもできない。
前例のない経済制裁を欧米と足並みをそろえて実施する、と言ってみたところで(それ自体は大きな効果をもたらすが)、「今そこにある危機」が即座に消えてなくなるわけではない。
そもそも米国が、昨夏にアフガニスタンから完全撤収し、ウクライナでも軍事介入しないと早々と宣言したのは、大失敗だった。
露大統領、プーチンは昨年8月に米軍がアフガニスタンから完全撤収し、「世界の警察官」の役割を米が放棄したのを好機ととらえ、宿願だったウクライナ侵略の準備に入った。
米大統領、バイデンは、米国が持つインテリジェンス(諜報)能力を最大限駆使して、「48時間以内に露軍が侵攻する」など機密情報を積極的に開示して露を牽制(けんせい)する一方、強い経済制裁を渋った欧州首脳を説得するなど打つべき手は打ってきた。
だが、相手は専制君主的に22年にわたってロシアを統治してきたプーチンである。自由主義諸国の常識は通用しない。
結果的に「常識人」のバイデンはプーチンの野望を止められなかった。米前大統領、トランプは「プーチンは天才だ」「問題なのはプーチンの頭が良いことではなく、われわれ(米国)の指導者がばかなことだ」とバイデンをこき下ろし、自分が政権を維持していたなら「こんな茶番を止めるのは簡単だった」と胸を張った。
多分、その通りだったろう。「非常識人」であるトランプは、何をしでかすかわからず、中国は本気でトランプが核攻撃をしてくると恐れた(『PERIL(危機)』から)。
プーチンでさえ、トランプ時代はウクライナ侵略を思いとどまった。私はトランプが大統領に選ばれたとき「トランプでいいじゃないか」と書いて顰蹙(ひんしゅく)を買ったが、「常識人」では、帝国主義的思考に凝り固まっている中露の指導者と対峙(たいじ)できない。
ウクライナのいまは、明日の日本である。「敵基地攻撃」の名称を変える、などというくだらないことをやっている場合ではない。
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