Is Japan Causing Trouble for Itself in the Straits of Taiwan?

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〈社説〉台湾情勢と日本 危機を自らあおるのか

力による現状変更は認められない―。

 岸田文雄政権が年末までに改定する国家安全保障戦略で、台湾海峡について、こう明記する検討に入った。

 50年前の国交正常化に際し、日本は、台湾を領土の一部とする中国の立場を〈十分理解し、尊重〉すると約束している。

 日本が“譲れない一線”として両岸関係を位置付ければ、中国は約束を反故(ほご)にする「内政干渉」と受け取りかねない。一層の反発は避けられないだろう。

 戦略は外交・安保の長期指針で初めて策定した2013年以来の改定となる。現行戦略は中台関係を「安定化の動きと潜在的な不安定性が併存している」と情勢を分析するにとどめている。

 台湾に対する中国の軍事圧力は米国が台湾に政府要人を派遣したり、武器を輸出したりするたびに高まってきた。

 中国が制定した反国家分裂法は武力統一を図る条件として(1)独立勢力が中国から切り離す事実をつくる(2)分裂をもたらしかねない事変が発生(3)平和統一の可能性を完全に失う―を挙げている。

 恣意(しい)的な運用が懸念されるものの、日米が刺激して武力行使の口実を与えるのは賢明でない。

 日本は、中国を「唯一の競争相手」と見なすバイデン米政権の方策に付き従うばかりだ。

 昨年春の日米首脳会談で菅義偉前首相は「防衛力強化の決意」を表明した。今年初めの安保協議委員会(2プラス2)は、台湾有事を想定した共同作戦計画の進展を歓迎するとし、日米の戦略を完全に整合させると踏み込んだ。

 5月の首脳会談で、岸田首相が防衛力の抜本強化と防衛費の増額を約束すると、9月の防衛相会談では事実上、敵基地攻撃能力を導入する考えを伝えている。

 経済面での中国排除と併せ、こうした日本の動向に、習近平指導部はいら立ちを募らせている。

 台湾の将来は台湾の人々が決めるべきだとの見解は、外交の場で繰り返し主張すればいい。問題は日本の敵対姿勢が、交渉の余地を狭め続けている点にある。

 そもそも国家安保戦略を巡る国会の討議はこれからで、有識者会議も発足したばかりだ。米国との交渉で外堀を埋め、追認を迫る場とするのは許されない。

 安全保障の目的は戦争回避にある。抑止力もまた、相手との意思疎通がなければ成り立たない。国民に何ら説明せず、軍拡だけを急ぐ政権の姿勢は、危機を自ら高めているに等しい。

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