米議会襲撃の報告書 民主主義立て直す契機に
米国の民主主義を立て直す契機とすべきだ。2021年1月のトランプ前大統領支持派による連邦議会議事堂襲撃事件の議会報告書が公表された。
大統領選に敗北したトランプ氏が結果を覆そうと「不正選挙」を言い募り、議会の承認手続きを妨害し、群衆を扇動したと認定した。「襲撃の大本はトランプ氏だった」と指摘し、四つの容疑で刑事訴追するよう司法省に勧告した。
調査は1年半に及び、関係者1000人以上から証言を得た。事実と証拠を積み上げた結論である。意義は大きい。
驚くのは、トランプ氏の常軌を逸した行動だ。
群衆が武装しているとの報告を警察当局から受けていたにもかかわらず、問題視せずに議事堂に集結するよう仕向けた。
襲撃で当時のペンス副大統領や上下両院議員の身に危険が迫っていることを知りながら、3時間にわたって事態を放置した。
「権力を失えばだれも見向きもしなくなる」「勝つことがすべてだ」とトランプ氏は側近に話したという。あまりに身勝手な理屈だ。
大統領の座に執着するあまり、権力の移行を力で妨害するようそそのかす。民主主義の危機をこれほど露骨に示すものはない。
重要なのは、こうした事件が起きた背景を検証し、二度と起きないようにすることだ。
襲撃を主導したのは、暴力的な白人至上主義集団や過激主義の武装グループだったという。報告書は監視の強化を提言する。
過激な集団とはいえ、議事堂という民主主義の象徴を標的とし、クーデターまがいの暴動を引き起こすのは尋常ではない。背景は解き明かされていない。
底流には米国社会の分断もあろう。襲撃に加わった人の多くは事件後、「民主主義を危険にさらしたことを後悔している」などと打ち明けている。
一方、先の中間選挙では、トランプ氏の主張を丸のみして戦った共和党の候補が大勢当選した。分断の溝はなお深い。
引き続き、超党派の取り組みで襲撃事件の真相に迫り、再発防止策を練り上げる必要がある。そうでなければ民主主義の再生はおぼつかない。
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