米国の銃犯罪 抜本的規制で歯止めを
一九九二年に米国留学中の服部剛丈(よしひろ)さん=当時(16)=が射殺された事件から三十年が経過した。米国の銃問題は改善するどころか、銃絡みの犯罪件数は最悪のペースを続けている。抜本的な銃規制で歯止めをかける必要がある。
この十一月には十日の間に大学、ナイトクラブ、スーパーマーケットで立て続けに銃撃事件が起き、合わせて数十人が死傷した。
このうち西部コロラド州の性的少数者(LGBT)向けのナイトクラブで五人が死亡した乱射事件で使われたのは、殺傷能力の高いライフル「AR15」だ。年間六百件以上起きる乱射事件ではおなじみの半自動小銃である。
近年、自殺を含めた銃による死亡者は毎年四万人を超える。米疾病対策センター(CDC)のまとめでは、二〇二一年は前年より8%増えて四万七千人余と過去最多を記録し、今年も四万人を突破した。コロナ禍がもたらす社会・経済不安が増加の背景にあると指摘されている。
米国は人口よりも多い四億丁もの銃が氾濫する社会だ。銃乱射事件が起きるとかえって銃の販売は増える。治安悪化の不安が人々を護身に走らすからだ。
銃器業界は活況を呈し、アルコール・たばこ・銃器取締局(ATF)によると、二〇年の銃器製造量は千百三十万丁。この二十年で三倍近く増えた。
米最高裁は六月、銃の携帯を規制するニューヨーク州の法律を憲法違反とする判断を下した。
自衛のために銃保持の権利を保障する憲法条項を盾にしているが、銃犯罪の深刻な状況を鑑みれば杓子(しゃくし)定規な判断だと言わざるを得ない。
一方、連邦議会は二十一歳未満の銃購入者の身元確認の厳格化などを柱にした規制法案を可決し、バイデン大統領の署名を経て成立させた。
銃規制法の成立は二十八年ぶり。一歩前進ではあるが、AR15のような殺傷力の高い銃の販売禁止にまでは踏み込んでいない。
米国は銃社会の異常さを自覚し、これを改める努力をしてほしい。
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