<社説>知事国連理事会出席 人権問題で基地訴えよ
沖縄が抱えるさまざまな困難を国内政治で打開できないならば、国際社会へ訴えて理解を求める。これは、米軍基地によって侵害されてきた人権の回復を求めて沖縄が繰り返してきた行動である。
玉城デニー知事は18日から21日までの間、スイス・ジュネーブで開催される国連人権理事会へ出席する。県知事の国連人権理事会出席は2015年の翁長雄志前知事以来、8年ぶりである。
玉城知事は「国際社会に対し、辺野古新基地建設問題や基地から派生する諸問題が、沖縄だけでなく人権や民主主義という普遍的な問題であることについて、県の考えを訴えたい」と語っている。
基地の整理縮小を求める県民の声が国政で顧みられず、米軍専用施設の約70%が集中する沖縄の現状は民主主義にもとる。米軍基地から派生する事件・事故は県民の人権を脅かしてきた。そのことを多くの県民が実感している。国連の場で沖縄の実情を訴える意義は大きい。
今回の玉城知事の行動を疑問視する動きもある。自民党県連と県議会の同会派のメンバーは知事に対し、人権理事会での発言について「辺野古問題を人権問題と結びつけず、冷静な発言をしてほしい」と申し入れた。「国際世論に訴えるのではなく、まずは国内政治の場において議論を深めるべきだ」とも求めた。
申し入れは、沖縄人を先住民族と位置付ける議論がある国連で権利保護を求めたり、人権問題と絡めて基地問題を論じたりすることへの警戒感に基づくものであろう。
辺野古新基地を含む沖縄の基地問題は人権問題だと多くの県民が実感している。国内政治で解決できればよい。それがかなわないところに沖縄の苦悩がある。県民の声が国民の声とならないところに沖縄の不幸がある。それは党派や政治姿勢を超え、県民が共有してきた認識である。
沖縄の県知事、県議会は幾度も海外で声を発してきた。米政府に対し、基地の整理縮小を訴える要請行動は西銘順治知事の時代から保革を問わず続けてきたことだ。これは沖縄の政治的財産だ。
さらにさかのぼれば、米統治下の62年2月、琉球立法院は、国連総会で採択された「植民地独立付与宣言(60年12月)を引用する形で、米国統治の不当性を訴える決議を全会一致で可決した。
米国や国際世論に訴えることは沖縄の自己決定権に根ざした行動だ。その延長上に玉城知事の国連人権理事会出席を位置付けることができる。
申し入れで自民党県連は、沖縄に関心を寄せる習近平国家主席の言動や尖閣諸島周辺での領海侵犯など中国の近年の動きに憂慮を示している。
中国の覇権主義的な動きは警戒しなければならない。そのためにも玉城県政が掲げた地域自主外交が東アジア地域の緊張緩和と沖縄の平和を促すものであるべきだ。
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