Can the World Be Led with Power Alone?

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「最強」と力を誇示するが、他国と協調する気はない。そんな国に世界は付いていくだろうか。

 トランプ米大統領が、政権初となる「国家安全保障戦略」を公表した。米国の安全保障政策を包括的に示す重要な文書である。

 特徴的なのは、トランプ氏が「最強の軍事力」を背景にした「力による平和」をうたっていることだ。「ライバル国に働き掛ければ信頼できるパートナーになり得るという過去20年の安保政策」を「間違いだ」と切り捨てた。敵対国家とも対話する国際協調を基軸としたオバマ前政権の路線から、大きく転換したといえる。

 トランプ氏はさらに「修正主義の中国とロシア」を米国に挑戦するライバルと位置付け、敵対心をあらわにした。ここでいう修正主義とは「米国中心の国際秩序の変更を図る」といった意味だ。

 加えて北朝鮮とイランを「ならず者政権」と批判し、国際テロ組織も含めた「共通の脅威」に対処するため「同盟国に公平な負担を求める」としている。

 米国の「力による平和」方針を、国際秩序維持に責任を果たす意思表示とみれば評価も可能だ。

 しかしトランプ氏はこの戦略発表の演説で、相変わらず持論の「米国第一」を繰り返している。世界共通の脅威であるはずの地球温暖化には関心も示していない。

 米国は北朝鮮の核危機に対応するため、中国やロシアに協力を求めている。敵視するが協力してくれ、という都合のいい使い分けがうまくいくとは考えにくい。

 国連安全保障理事会では今週、トランプ氏の「エルサレムはイスラエルの首都」認定の撤回を求める決議案が出され、米国以外の全理事国が賛成した。自分勝手な論理を振りかざす米国に、世界は厳しい目を向けている。

 国際社会における米国の影響力が相対的に低下しつつあるのは事実だが、その回復のため軍事力だけに頼るのは時代錯誤だ。協調と説得、さらに包容力などのソフトパワーも総動員して世界をリードするのが超大国の役目である。

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