日米同盟をより強固にするには、政府間の外交にとどまらず、国会議員、経済人、学者など幅広い層が政策対話を重ねることが重要である。
財団法人・日本国際交流センターの主催する「新・下田会議」が東京で開かれ、米上下両院議員計6人を含む日米の有識者が両国関係の課題や将来を議論した。
1967~94年に9回開かれた「下田会議」の“復活”は、民間団体が取り組んできた日米の議員交流や政策対話を再活性化させるのが目的である。
2009年の政権交代後、日米関係は急速に悪化した。昨年の日米共同世論調査の日本側回答で、日米関係を「悪い」とする回答が40%に上り、初めて「良い」(33%)を上回ったのは象徴的だ。
最大の原因は無論、鳩山前政権の稚拙な外交だが、日米外交を側面から支える環境が両国に整っていないことも指摘されている。
日本国際交流センターの調査によると、1990年代後半には年平均50人の米国会議員と72人の議会スタッフが来日していた。だが、07~09年の年平均は、議員が14人、スタッフが39人に減少した。
ワシントンでは、日米関係を扱う政策研究機関が20から10に半減した。中国の専門家が42人、韓国が7人に対し、日本は4人しかいない。米国での日本研究は「静かな危機」にあるとも評される。
日本の対外情報発信も予算不足で停滞し、米側の日本への関心低下との悪循環を起こしている。
菅政権が「日米同盟重視」に転じたことで、日米関係は今、一応修復の方向にある。
ただ、関係改善は外的要因に負う面が大きい。米国が連携相手と期待した中国が、地球温暖化や南シナ海の安全保障の問題で身勝手な対応を強めたことや、朝鮮半島情勢の緊迫化である。
日米政策対話の拡充は一朝一夕にはできない。地道に、様々な人的交流を増やすことが重要だ。友好親善にとどめず、日米の共通課題をどう克服するか、建設的な議論を行ってこそ信頼が深まる。
政府も財界も、目先の成果を重視する「事業仕分け」に走らず、中長期的に日米関係を発展させる視点を持つことが大切だ。財源難に悩む多くの民間団体への支援を前向きに検討してもらいたい。
今年の菅首相訪米に合わせた日米同盟深化の作業で、人的交流は、安保、経済とともに3本柱に位置づけられる。日本人の英語・日本語教師の米国派遣を増やすなど、政府全体で知恵を絞るべきだ。
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