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Posted on August 4, 2011.
社説:米朝協議 「北の核」交渉は慎重に
北朝鮮の核問題を扱う6カ国協議は、08年12月の首席代表会合が事実上決裂して以来、開かれていない。再開すれば意味ある交渉が可能なのか。これを米政府が見極めようという北朝鮮との高官協議が、ニューヨークで2日間、行われた。
米国の北朝鮮担当特別代表ボズワース氏は、北朝鮮側に「行動」を求めたという。6カ国協議に誠実な姿勢で臨むことを「行動で証明」すれば、北朝鮮が望む米国との関係改善にも道が開ける、といった文脈だ。現在進行中の核開発活動を、一部なりとも実際に止めてみせよ、という意味のように思われる。
北朝鮮の反応は明らかでない。今後は米国が日、韓に結果を説明し、対応を協議することになろう。
そして、もしも6カ国協議再開を推進しようとするなら、慎重の上にも慎重を期してほしい。
2年7カ月前の同協議中断は、ブッシュ政権時代の交渉担当官が平壌での口約束を信じ、北朝鮮をテロ支援国家リストから外したあげくのことだった。オバマ政権への移行後、北朝鮮は人工衛星打ち上げだとして長距離弾道ミサイルの発射実験を行い、2度目の核実験も強行した。
昨年には多国籍調査団が「北朝鮮製魚雷による水中爆発」と断定した韓国の哨戒艦沈没事件や、韓国領の島への砲撃事件があった。
北朝鮮が米国の核専門家を招き、秘密施設にウラン濃縮用の遠心分離機が多数並んでいるのを見せつけたのは、その砲撃の11日前だった。
こうした経緯だけみても、慎重な対応が不可欠なのは明らかだろう。6カ国協議が比較的順調に動いているように見えた時期でも、結果的には北朝鮮だけが利益を確保し、非核化の動きは逆戻りしたのだ。
とはいえ北朝鮮の核開発を放置するわけにはいかない。特にウラン濃縮は施設を隠しやすく、高濃縮ウランによる核兵器製造はプルトニウム型より容易だ。米国はこの兵器や技術の拡散を特に警戒している。
米国は、韓国と北朝鮮の厳しい対立が偶発的な軍事衝突につながり、朝鮮半島情勢が極度に悪化する可能性も懸念しているようだ。
北朝鮮の「行動」を引き出すには中国の協力も必須だ。最近は「中朝蜜月」が目立つが、中国も北朝鮮の行動に困惑しているふしがある。6カ国協議の議長国としての責任もある。影響力行使を強く求めたい。
北朝鮮が柔軟姿勢に転じるなら、日本は当然、拉致問題解決に動きたいところだ。しかし先日明るみに出たような不可解かつ責任の所在があいまいな日朝接触は、むしろ日米韓の協調を乱す恐れがある。これも慎重に推進すべき課題といえよう。
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