US Government Shutdown: Overcome Conflict and Avoid a Crisis

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10月6日付 米政府機関閉鎖 対立乗り越え危機回避を

米政府機関の一部閉鎖が長期化する恐れが出てきた。議会で与党・民主党と野党・共和党の対立が解けず、1日から始まった2014年会計年度の暫定予算が成立するめどが立たないためだ。

 閉鎖が長引けば一般市民の生活に影響が出るのはもちろん、個人消費が減速し、回復途上の景気を押し下げる可能性がある。米国は世界経済のけん引役だけに、再び景気が後退する影響は計り知れない。

 与野党は国民不在の対立をやめ、事態打開の糸口を早く見いだしてもらいたい。オバマ大統領も指導力を発揮すべきだ。

 政府機関が閉鎖したのはクリントン政権下の1996年1月以来、約18年ぶりである。安全保障分野や重要なインフラ運営に従事する職員を除く、80万人以上が一時帰休の対象となっている。

 ニューヨークの自由の女神像や、グランドキャニオンなどの国立公園、観光名所が軒並み閉鎖されたほか、商務省や労働省は雇用統計など経済指標の発表を延期した。

 外交にも支障が出始めている。オバマ大統領は、きょうから予定していたインドネシアとブルネイ歴訪を中止した。議長役を務める予定だった環太平洋連携協定(TPP)首脳会合も欠席する。年内妥結を目標とする交渉への影響は避けられないだろう。

 政府機関の閉鎖以上に深刻なのが、連邦政府債務の上限引き上げ期限が迫っていることだ。

 国債発行や借入金など、米政府が借金できる金額には上限が定められている。既に上限近くに来ており、17日までに議会が引き上げで合意しなければ、政府は新たな借金ができなくなる。

 資金繰りが困難になると、米国債が債務不履行(デフォルト)に陥る。金融市場の秩序は大きく乱れ、08年に起きたリーマン・ショックを上回る世界経済危機に発展する恐れがある。

 米国債を大量に保有する日本も打撃を受けるのは必至だ。回復の兆しが見えてきた経済は一気に冷え込みかねない。

 対話の席に着かなければ最悪の事態を招くことを、米議会は肝に銘じてほしい。

 与野党の対立の火種になっているのは、オバマ大統領が歴史的実績と誇示する医療保険改革である。

 改革を定めた連邦法は10年に成立し、一部の施策は実行に移されている。来年1月には個人の加入義務が生じる運びだ。

 これを阻止したい共和党が、暫定予算と絡める戦術に出た。民主党が多数を占める上院が予算案を可決したのに対し、共和党が多数の下院で、改革の実施延長を盛り込んだ予算案を可決した。

 党内保守派の強硬意見に党執行部が押し切られたためとみられるが、予算の成立を人質に取るのは疑問と言わざるを得ない。執行部は保守派を説得すべきである。

 与野党は昨年、減税失効と歳出の強制削減が重なる「財政の崖」を超党派の合意で回避した実績がある。世界経済を混乱に陥らせないよう、対立を乗り越える知恵をもう一度見せてもらいたい。

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