報道によれば、自公与党協議の場で、3日、政府は、憲法9条(海外派兵の禁止)を根拠に、海外で他国の武力行使と「一体化」してはならない…として来た政府見解を変更(骨抜きに)する提案を行った。
つまり、自衛隊が支援する他国部隊が現に戦闘中(つまりそこが戦闘地域)でも、その提供する物品(例・ガソリン、水、食料)・役務(例・輸送、医療)が直接戦闘に用いられなければ、後方支援できる…としようとした。
しかし、さすがに公明党も反発したし、メディアも敏感に反応したために、翌4日に、戦闘現場では自衛隊は支援活動をしないし活動現場で戦闘が起きたら活動を中断する…という条件に変更された。
その結果、提案は、自衛隊が、非戦闘地域において、戦闘に直接用いられない物品・役務を戦争当事国に提供することはできる…という内容に変更された。
そうなると、自衛隊は、前線で戦闘中の他国軍部隊の背後の基地へ人(兵員)と物資(武器弾薬)を輸送し、ガソリン、食料、水を提供し、そこで負傷者の治療を担当する…ことができるようになる。
これではまるで米軍と自衛隊が一体になり前面(戦闘行為)はアメリカ後方は日本…という役割分担で戦争を遂行している関係に入ることになる。
しかし、これはいったいどこの国の話なのであろうか?要するに、自衛隊と米軍が混然一体となって戦争をすることは許されないが、前面は米軍で後方は自衛隊…という役割分担で今後は世界のどこででも戦争ができる…と認めろ…と言われていることになる。
これではまるで、憲法9条もこれまでの70年近くの議論も実績も何もない国である。
そういう意味で、今の安倍政権は何か「キレて」しまったような状態にあると言わざるを得ない。
上述のような政府提案は、要するに、自衛隊が、世界の警察・米軍の二軍になる事を意味しているが、私は、現行の憲法9条の下ではそのような提案はもとよりあり得ないと思う。
にもかかわらず、このような提案が堂々と出て来るところが現政権の凄さである。それに対して自民党内部からも野党からも有効な反論が出て来ないところが、今の政治の問題であろう。だから、もはや国民自身がしっかりするしかない。
(慶大名誉教授・弁護士)
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