トランプ氏勝利 米国社会の復元力は
米大統領選序盤のニューハンプシャー州予備選で、共和党は不動産王トランプ氏が勝利した。憎悪や差別をあおる同氏に、人気が集まるのは米国らしい一面なのかもしれない。しかし大丈夫なのか。
前回のアイオワ州党員集会で次点だったトランプ氏は戸別訪問や電話攻勢で支持を固め、二位の候補にダブルスコアで勝った。共和党主流派の候補らは互いにつぶし合った形だ。
トランプ氏が出馬表明した昨年六月には、有力候補になると予想した人は、あまりいなかったはずだ。ポピュリズム的発言で物議を醸し、それが逆に人気を上昇させた。
メキシコ移民を犯罪者呼ばわりして国境に壁を築くと表明し、テロを理由にイスラム教徒の入国禁止を主張する。
人種や宗教をスケープゴートにして、移民問題、テロ対策や格差解消に有効な手を打てない既成政治への有権者の不満や怒りを、転嫁させようとする手法が目立つ。
トランプ氏の勢いは止まらないのだろうか。米国では過去にも極端な主張が叫ばれたことがあった。しかし結局は、対抗する力が働いてバランスを保ってきた。
一九五〇、六〇年代、南部の政治家らが黒人の人種隔離を主張して白人の支持を集めたが、キング牧師らが公民権運動で差別解消に立ち上がった。マッカーシズムによる赤狩りでも反発や抵抗、ベトナム戦争でも反戦運動が起きた。
トランプ氏の過激な発言は、候補者指名を獲得するためのなりふり構わぬ戦略とも考えられる。今後の選挙戦で大統領への適格性を厳しく問われるようになり、穏健な政策へと軌道修正してくる可能性もある。
米社会の復元力を注視したい。
与党、民主党では、民主社会主義者を自称するサンダース上院議員がクリントン前国務長官に大差で勝った。ニューハンプシャー州はサンダース氏の地盤で予想どおりの結果だ。
同氏が訴える公立大学授業料無償化などの社会民主主義的な政策は、欧州諸国では実際の政治にも取り入れられている。しかし、米国の選挙戦ではあまり議論されることはなかった。
深刻な格差拡大への不満を突き付ける新たな問題提起といえる。
他州でのクリントン氏優勢が伝えられる中、若者の圧倒的な支持を得るサンダース氏の主張が、大統領選でどう反響を広げていくのかにも注目したい。
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