米国が、イランの最高指導者ハメネイ師の直属組織であるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を攻撃し、殺害した。
イランは欧州などとの核合意から逸脱して保有ウランを無制限に濃縮すると宣言し、両国間の緊張が一気に高まった。
これが大規模な紛争に発展するようなことになれば、中東にとどまらず、世界全体の平和と安全が深刻な打撃を受けるだろう。両国はもちろん、日本を含む国際社会が紛争の抑制に全力を挙げなくてはならない。
レバノンやシリア、イラクなどで、親イラン武装組織が米国やイスラエルに対してテロを含む挑発を繰り返している。これらを背後で支援してきたのがソレイマニ司令官が率いる「コッズ部隊」とみられている。
昨年暮れにはイラク駐留米軍が武装組織の攻撃を受け、米国人軍属も死亡した。米国にすれば、国民の安全を守るためのやむを得ない措置として司令官の殺害に踏み切ったのだろう。
見逃してはならないのは、トランプ米政権が今回、米国を脅かす行為をもはや容赦しないという姿勢を明確にしたことである。
イランが支援する武装組織によるテロの拡散は、中東の大きな不安要因である。航行の自由を脅かすタンカー攻撃や船舶拿捕(だほ)でもイランの関与が指摘されている。
米国は、軍隊の一種であるイラン革命防衛隊を「テロ組織」と指定している。イランがなすべきは米国に対する威嚇ではなく、各国の武装組織との絶縁である。タンカー攻撃などと無関係ならそれを証明しなくてはならない。
憂慮するのは、ソレイマニ司令官が国民に英雄視され、殺害への報復として戦争の危険が高まったことだ。ロウハニ大統領は報復を公言し、トランプ大統領も激しい攻撃で応じると表明した。
イランは昨年5月以来、段階的に核合意の逸脱を表明しており、今回の措置は5度目である。合意は破綻の瀬戸際ともいえる状況だ。国際社会はイランに対して、報復の自制と核合意復帰を求めなければならない。
英国とフランス、ドイツの3首脳はイランに合意の順守と暴力行為の停止を求める共同声明を出した。米国、イランの双方と強いつながりを持つ日本が担うべき役割は大きい。仲介役として積極的に関わっていくべきだ。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.