COVID-19 Is Changing the Shape of the US Military: Unmanned and Downsized

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コロナが変える米軍の姿 「無人・小型化」を推進へ

新型コロナウイルスの感染を防ぐには、人が集まる狭い空間を避けることが鉄則だ。ところが、どうしてもこのルールを守れない集団がある。各国の海軍だ。

軍艦や潜水艦はいわば「3密」のかたまりだ。体が触れ合うくらい狭い密室で長い月日、衣食をともにする。航海は数カ月におよぶこともある。

当然、感染がまん延するリスクは高く、米海軍ではコロナの陽性者がすでに2千数百人になった。米軍全体の感染者の約4割だ。

世界中の海に艦隊を送り、治安に目を光らせる米海軍の動きが止まれば、海洋の安定にも影を落としかねない。とりわけ気がかりなのが、大黒柱である空母が傷ついていることだ。

3月以降、空母11隻のうち、セオドア・ルーズベルトなど4隻で感染が広がり、任務の中断を強いられた。米軍は中国などをにらみ、アジア太平洋には常に空母を展開するよう努めてきたが、その原則が崩れてしまった。

その後、3隻は少しずつ任務再開に向かったが、ルーズベルトは5月20日までグアムで乗員の隔離や消毒に追われた。

米軍が受けた衝撃は計り知れない。米国が超大国でいられる大きな理由は、最強の海軍力をもち、世界の海を支配しているからだ。その主力は1隻当たり数十機の艦載機を抱え、どこでも即座に猛攻撃を仕掛けられる空母である。

ところが、他国を震い上がらせる空母があっさり新型コロナにまひさせられてしまった。

もっとも「3密」から逃げられない点では、中国海軍も同じだ。中国軍は感染の実態を明かしていないが、元自衛隊幹部らは「感染が出ていないはずはない」とみる。実際、一部の演習が延期されたり、軍艦の艦長らが隔離されたりしたとの情報も漏れてくる。

中国は4月以降、アジアの海で挑発を強めている。空母が演習したほか、中国公船が尖閣諸島の領海に入り、日本漁船を追いかけた。米空母の不在につけ込んでいるとの見方が多いが、「本当は感染に苦しむ内情を隠すため、あえて強気を装っている可能性もある」(日本の安全保障担当者)。

では、パンデミックの脅威は今後、アジア太平洋をめぐる米中の海軍競争をどう左右するのか。おそらく、米側が受ける影響のほうが大きい。米艦隊は感染の危険を冒し、太平洋の広い海域を行き来しなければならないからだ。

米海軍はこうした課題を精査し、パンデミックに耐えられる姿に進化していこうとするにちがいない。いったん演習などの停止を強いられた陸軍も例外ではないだろう。米国に安全保障を頼るアジアにとって他人ごとではない。

米国防総省内の議論から判断して、向こう10~20年に速まりそうなのは次のような変化だ。

(1)空母を軸とした重厚長大型から、小さな艦船からなる分散型の艦隊の比重を高めていく。

(2)ドローンや無人水上艦、無人潜水艦の導入が速まるほか、人工知能(AI)の活用が進む。

(3)演習ではシミュレーター装置などを使った仮想訓練も積極的に取り入れていく。

こうした動きは、コロナ前から出ていた。中国のミサイルや潜水艦の能力が高まるなか、図体が大きい空母は格好の標的となり、沈められてしまう危険が高まっているからだ。

海軍は2034年までに、総艦船数をいまの289隻から355隻にもっていく計画だ。当初は空母や原子力潜水艦をふやす方向だったが、ここにきて無人・小型化の流れを反映した内容に見直す動きも出ている。

たとえば米紙「ディフェンス・ニュース」によると、空母を2隻減らし、無人・小型の艦船を増やす案が国防総省で浮上している。海軍改革に詳しいスタバリディス元米海軍大将も、力点は無人・小型艦に移ると予測する。

むろん、どこまで一気にそのような変革が進むのかは、予断を許さない。職を奪われかねないパイロットや艦船の操縦士らは抵抗するだろう。空母や大型艦船を手がける軍需産業も、反対に回るにちがいない。元国防総省高官は「中国軍に対抗するため、本来はもっと無人化や小型化を急ぐべきだが、現場の抵抗が強くて簡単ではない」と語る。

しかし無人・小型化などの流れが勢いづくことはあっても、後ずさりすることはないだろう。空母を中心とした大型艦隊がミサイルなどだけでなく、パンデミックにも脆弱なことを、米軍首脳は嫌というほど思い知らされたからだ。

だとすれば、日本や韓国、オーストラリアといった米国の同盟国は、これから2つの点を注視しなければならない。

第1に米中の軍事バランスへの影響だ。中国は無人兵器の開発を急ぐ一方で、大型艦船にも巨額の資金を注いでいる。いま3隻目の空母を建造中のほか、昨年だけで5隻以上の駆逐艦を完成させた。将来、米艦隊が無人・小型化に向かった場合、中国軍への抑止力をどう保つのか、米側と入念に擦り合わせていくべきだ。

第2に米海軍の進化に合わせ、自衛隊やオーストラリア軍、韓国軍の兵器や運用も変革していく必要がある。この努力を怠ったら、米側と緊密に行動することが難しくなってしまう。

コロナ危機が突きつける挑戦状は米軍だけでなく、同盟国側にも向けられている。

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