米アフガン撤退 身勝手な前倒し危うい
07/07 05:00
米政府はアフガニスタン駐留米軍の完全撤退を当初期限としていた米中枢同時テロ20年となる9月11日から前倒しし、来月末までに完了する見通しだと発表した。
撤退作業は既に終盤で、最大拠点である首都カブール近郊のバグラム空軍基地からも引き揚げた。
懸念されるのは治安悪化だ。
バイデン大統領が4月に完全撤退を表明して以降、反政府武装勢力タリバンは攻勢を強めている。実行者不明の爆弾テロも相次ぎ、多数の犠牲者が出ている。
今のままでは政権が崩壊して、内戦に陥りかねない。残存する国際テロ組織アルカイダなどが息を吹き返して、アフガンが再び「テロの温床」になる恐れもある。
バイデン氏は撤退表明時に、和平実現を約束した。米国はアフガン政府とタリバンとの停戦協議を仲介して、治安を回復させ、和平への道筋を付けるべきだ。それが撤退の大前提である。
撤退理由に中国との競争に注力することも挙げたが、自国の都合ばかり優先するのは身勝手だ。
アフガンへの介入は、同時テロを実行したアルカイダをかくまったとして、米軍が当時のタリバン政権を攻撃したのが発端だった。
撤退はトランプ前政権が打ち出し、バイデン政権が追認した。同時テロ20年までに「米史上最長の戦争」を終わらせ、国民にアピールする狙いがあるのは間違いない。
先月、ホワイトハウスで開かれた米アフガン首脳会談で、バイデン氏はガニ大統領に対して、治安部隊の活動に約33億ドル(約3600億円)を支出するなど、支援の継続を表明した。
治安回復を弱体化したアフガン政府任せにする姿勢が透ける。撤退前に少なくとも和平への枠組みを作るべきだろう。
振り返れば、アフガンは大国の都合に振り回されて多大な犠牲を強いられてきた。
1979年に旧ソ連が軍事介入した後、多数の国民の命が奪われた。10年後に撤退すると、米など西側陣営は関心を失って内戦状態となった。
今回の紛争では既に4万人以上の民間人が死亡した。このまま米軍が撤退すれば、さらに悲惨な歴史を刻むことになりかねない。
アフガン和平を巡っては、周辺国が協議を断続的に進めているが目立った成果は出ていない。民主化を支援してきた日本など国際社会が和平を後押しすべきだ。
国連も、より積極的に関与して事態打開を図る責任がある。
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