米経済の安定に万全尽くせ
2021年7月30日 19:00
力強く回復する米経済に、不安要因が浮上している。4~6月期は4四半期連続のプラス成長となったが、新型コロナの感染が再拡大し、物価の上昇も続く。先行きは見えにくく注意が必要だ。
29日発表の米実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は前期比年率で6.5%増えた。大規模なコロナ対策やワクチン接種の拡大で消費が大きく伸びた。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長も28日、経済の順調な回復を背景に量的緩和の縮小を探る方針を示した。多くの市場関係者は今年末か来年初に量的緩和の縮小が始まるとみている。
心配なのは、感染力の強いインド型(デルタ型)の流行だ。全米の1日の感染者数は6月中下旬には1万人を下回ったが、直近は8万人を超える。パウエル議長はワクチンの接種で経済への影響は減るとみるが、その接種のペースが鈍っているのが気になる。
今後さらに感染者が増えれば、外出が抑制され消費や生産活動に水を差しかねない。給付金の効果も薄れつつあり7~9月の成長率は大きく鈍化するとの声が多い。
物価の高止まりも懸念材料だ。4~6月の個人消費支出(PCE)物価指数は年率6%台の上昇となった。FRBはインフレは一時的と強調しているが、実質購買力の低下が消費の手控えにつながるとの懸念が強まっている。
ここに感染拡大が重なり内外の供給網の混乱が続けば物価上昇に拍車がかかりかねない。感染を恐れる働き手の復職が遅れ労働市場が引き締まる結果、賃金が上昇し物価に波及するとの見方もある。
経済の回復ペースが鈍る一方、インフレが長引くシナリオが現実となった場合、FRBは経済が本格回復する前に緩和的な金融政策を修正せざるを得なくなる。
経済の回復を持続させながら物価の安定をはかるには、感染防止の徹底と周到な経済・金融政策のかじ取りが必要だ。国内外の経済や市場のリスクにも目配りした万全な対応を求めたい。
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