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ノーベル物理学賞に決まった米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員の自宅に、東京大の佐橋亮准教授の近著『米中対立』(中公新書)があった。コンピューターを使い気候変動を予測するモデルを開発した気候・気象学の先駆者が、国際政治に関心を寄せているのが印象深かった。
今年、米国では気候変動対策に積極的なバイデン政権が発足。中国の習近平国家主席は新たな石炭火力発電所の海外での建設中止を発表した。月末には国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が始まり、地球温暖化の防止、適応策などの進展が注目されている。
気候変動の将来を予測する上で、二酸化炭素排出世界1、2位の中国と米国の動向を知る必要がある。真鍋さんの米中関係への関心はそんな「好奇心」から来ているようだ。今後、「干魃(かんばつ)や大雨の頻度、海氷の減少といった傾向がどんどん強くなる」と懸念するだけに、適切に対処できるのか気になるのだろう。その見極めは、気候・気象学全体のレベルを引き上げたとされる泰斗にも難しいらしく、大学の記者会見でこう話していた。「気候変動を理解するのは大変難しいが、政治を理解するのはもっともっと難しい。私はちゃんと理解できたためしがない」。人間の行動は自然現象より不可解ということか。(平田雄介)
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