米上下両院議員や州知事を改選する11月の中間選挙に向け、各州での予備選が本格化している。注目の的となっているのがトランプ前大統領の動向だ。
予備選は、政党が本選に進む候補を一本化する選挙だ。共和党ではトランプ氏に支持を求める候補が後を絶たない。これまで140人以上が支援を受け、すでに実施された予備選での勝率は高い。
昨年、大統領選の敗北を認めないまま民主党のバイデン氏に政権を引き渡した。政治の表舞台への再登場は、中央政界での復権を果たし、2024年大統領選に再出馬するための布石ではないか、といった臆測が飛び交う。
人気を示す一例が、先月の中西部オハイオ州での上院選の予備選だ。主要候補3人がこぞってトランプ氏を称賛し、忠誠心を競い合った末、投票日直前にトランプ氏が支持表明した候補が勝利した。
驚くのは、トランプ氏が「前回大統領選は不当だった」との主張を今も繰り広げ、これに賛同するかどうかを「踏み絵」にしていることだ。これを拒んで支持を撤回された候補もいる。
共和党内でのトランプ氏の支持率は7割以上と今なお高い。支持基盤は保守的な白人層だ。約20年後には人口の半数を割り込んで少数派に転じると予測され、危機感を募らせている。
トランプ氏が訴える「米国を再び偉大に」のスローガンには、白人中心社会を取り戻すとの意味合いがある。差別を助長し、分断をあおる過激な一面がある。
これに対し、人種的な多様性を重視する民主党は差別反対の声を上げる。白人中心社会を変えようとする運動が各地の教育現場や職場などで起きている。
米国人とはだれのことか、米国とはどのような国か。根本的な認識を国民が共有していないことが、深まる分断の根底にある。人口動態の変化が進むにつれ、この溝はさらに広がっていくだろう。
「米国の現代史で最も重要な中間選挙になる」と、バイデン大統領ら与野党の指導者は口をそろえる。必要なのは、トランプ氏にこだわらない大局的な視点だろう。
分断を修復し、新しい米国を創る。過去への郷愁ではなく、未来の希望を語る論戦を期待したい。
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