<社説>中東での米報復 衝突拡大回避へ自制を
米軍がイラクとシリアにある親イラン武装勢力の拠点を攻撃した。司令所や補給施設などを標的とし、米本土から戦略爆撃機も参加する大規模な空爆だった。
先月末にヨルダンの米軍施設で米兵3人が殺害された無人機攻撃への報復だとしている。
また米英両軍は、紅海で商船を狙うイエメンの親イラン武装組織フーシ派の支配地域も攻撃した。
昨年10月にパレスチナ自治区ガザでイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、ハマスを支援する親イラン組織と米国の衝突は、拡大する一方だ。
これ以上緊張を高めれば大規模な紛争に発展しかねない。関係国は自制し、報復の連鎖を食い止める必要がある。
報復の背景には、米側に初めて死者が出たため米国内で対イラン強硬論が勢いづいたことがある。11月の大統領選を控え、バイデン大統領としては弱腰との批判を避ける狙いもあるのだろう。
バイデン氏は国際法に基づく自衛権の行使だとしつつ、イラン国内への攻撃は避け、紛争の拡大は望んでいないと表明した。
冷静な対応が欠かせない。
イランも米軍を非難したが、直接は関与しないとした。親イラン勢力に攻撃縮小を求めたという。
地域大国のイランと米国が交戦すれば、世界に混乱が拡大しかねない。そうした事態を避けるには、根本の原因であるガザでの衝突を一刻も早く終わらせることが不可欠である。
国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルに、ジェノサイド(民族大量虐殺)を防ぐよう命じた。しかしイスラエルは、ガザへの攻撃を続けている。女性や子どもを中心に死者は2万7千人を超えた。
さらにイスラエルは避難民が集結しているガザ南部ラファへの地上侵攻に踏み切ろうとしている。
民間人の虐殺は国際法違反だ。
米国やカタールなどの仲介で、イスラエルとハマスは戦闘休止を巡って交渉を続けている。
国際社会は戦闘終結が実現するよう外交努力を尽くす時だ。
イスラエルがハマスのイスラエル奇襲に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のスタッフが関与したと主張した。日米欧は資金拠出を停止し、UNRWAは活動停止の危機に陥っている。
ガザでは多くの避難民が過酷な生活を強いられている。スタッフに疑惑があったとしてもUNRWAの活動をやめさせるのは非人道的だ。拠出を再開すべきである。
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