米大統領選 分断か融和かの分岐点だ
既成の価値観に縛られない型破りな統治を続け、国民が分断された社会のままでいくのか。それとも多様性を認め、融和を図る社会を目指すのか。11月の大統領選は米国社会のかつてないような分岐点となる。
与党共和党の全国大会が終わり、再選を狙うトランプ大統領に民主党のバイデン前副大統領が挑む構図が確定した。
トランプ氏は好調な経済を最大の実績に掲げ、支持を得てきた。党大会の演説でも「偉大な国」を目指し「史上最高の経済の再構築」を公約に挙げた。
だが、新型コロナウイルスの感染拡大は経済を直撃し、過去最長を記録した景気拡大は2月に終わり、看板の低失業率も過去のものになっている。
1期目最大の失政はコロナ対応だ。当初、楽観して有効な対策を打たなかった結果、世界最悪の死者数を出している。発生源である中国への批判を繰り返すが責任転嫁は否めない。
国内外の関心を集めた白人警官による黒人暴行死事件では、人種差別の解消を明言しないばかりか、一部のデモに対し「法と秩序」の名の下に軍隊を送り込んで抑えようとした。
まさに大統領としての資質が問われている。共和党の有力者が続々とバイデン氏支持を表明するのも危機感の表れだろう。
それでもトランプ氏は共和党支持者には根強い人気がある。不法移民などを「敵」と決め付け、憎悪や恐怖をあおる手法で支持を集めており、国民の融和には程遠い振る舞いが際立つ。再選しても分断を解消へと導くとは考えにくい。
一方、バイデン氏は党大会の演説でトランプ政権時代を「暗黒の時」と批判し、同時に「私を支持しない人々のためにも一生懸命に働く」と率先して融和を図る姿勢を鮮明にした。
副大統領候補に移民2世で黒人女性のハリス上院議員を選んだのは象徴的だ。当選すればハリス氏は女性としても黒人としても初の副大統領となる。米国社会の多様性を肯定する力強いメッセージである。
民主党は前回選挙で予想外の敗北を喫した。今回は党内の結束を固め、トランプ政治の是非を問う選挙にしようと躍起だ。現状の否定に終始するのではなく、経済格差や人種差別をいかに解消し、どんな未来を描くのか、具体策を提示してほしい。
「米国第一主義」を唱えるトランプ氏はさまざまな国際的枠組みから離脱し、中東をはじめ各地で緊張を高めてきた。国際協調を主張するバイデン氏は大国の指導力をどう発揮するつもりなのか。コロナ後の国際社会で米国が果たす役割について、私たちも論戦に注目したい。
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