Stop Throwing Wrenches into the New Iran Talks

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<社説>イラン巡る情勢 核合意復帰を妨げるな

米国のイラン核合意復帰を巡る両国の間接協議が始まる中、イランの核施設が攻撃された。復帰反対のイスラエルが関与した疑いが濃い。核合意存続のために国際社会は結束し、妨害を排すべきだ。

 十一日に攻撃を受けたのはイラン中部ナタンズのウラン濃縮施設で、電気系統などが損傷した。同施設では昨年七月にも爆発が発生し、妨害工作が指摘されていた。

 犯行声明は出ていないが、事件当日にイスラエルのネタニヤフ首相は「イランの軍備増強に対する闘いは重大な使命」と発言。イスラエルの国内メディアも、事件の背後に同国の情報機関モサドがいると一斉に報じており、イスラエルが関与した可能性が高い。

 その場合、標的は六日から欧州連合(EU)の仲介で始まった米国とイランの間接協議だ。米国のトランプ前政権が離脱した核合意への米国の復帰と、それに伴う対イラン経済制裁の解除がテーマだが、ネタニヤフ首相は「米国の核合意復帰はイランの核兵器開発への道を開く」と懸念している。

 協議が始まった六日にも、紅海でイラン革命防衛隊の偵察船が攻撃を受けた。米有力紙は米国当局者の話として、米国がイスラエルから攻撃を知らされていたと報じている。「攻撃を黙認しつつ、交渉するのか」とイラン側に米国への不信感を募らせる狙いが透けて見える。米国への揺さぶりの意味もあろう。イランは濃縮施設攻撃への反撃として、ウランの濃縮度を60%にまで上げた。

 米バイデン政権の核合意復帰への動きは当初、鈍かった。そのことに失望したイランは先月下旬、中国と二十五年間の包括的な連携協定を結んだ。中国はサウジアラビアやトルコにも触手を伸ばしている。米国にとっては対中包囲網がほころびかねず、そうした危機感が間接協議の参加を促した。

 協議は始まったばかりだが、米国の対イラン政策の最重要課題は核兵器保有の阻止だ。イランは六月に大統領選を迎えるが、反米色の濃い保守強硬派が優勢だ。核合意への速やかな復帰はそうした流れに対するけん制にもなる。地域の緊張緩和には不可欠だ。

 だが、イランと緊張関係にあるイスラエルや一部の湾岸諸国は反発を強めている。米国はそうした国々の懸念を拭うために説明を尽くし、妨害を抑えるべきだ。合意に加わっているロシアや中国、英国、フランス、ドイツも米国の努力を支えねばならない。

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