US-Russia Summit: Don’t Let Putin Get Arrogant

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米露首脳会談 プーチン氏の増長を阻め

2021/6/19 05:00

クリミア併合や民主主義諸国へのサイバー攻撃など、悪行を重ねてきたロシアのプーチン政権が行動を改めるのか。問われているのは、この一点である。

バイデン米大統領とプーチン露大統領の対面による初の首脳会談がジュネーブで行われた。両首脳は核軍備管理に向けた「戦略的安定対話」を始めることで合意した。サイバー空間の安全保障に関し、専門家の協議体を設けることも決まった。

バイデン氏が今回の会談を行ったのはロシアとの「安定的で予測可能な関係」を築くためだった。中国の抑止に注力するため、ロシアに国際規範を順守させ、破壊的な対外行動をやめさせるという狙いである。

バイデン氏は「ロシアと向き合う上での明確な基礎を築いた」と会談を総括した。米国で大きな被害が出ているロシア発のサイバー攻撃をめぐり、バイデン氏は標的にしてはならない16の重要インフラ分野を会談で例示し、露政府が攻撃に関与すれば報復すると警告した。反体制派指導者、ナワリヌイ氏の投獄などロシア政府による人権侵害についても「問題提起を続ける」と明言した。

だが、プーチン氏が性根を入れ替えると考えるのは楽観的すぎる。プーチン氏は、米大統領選への干渉や露情報機関が関与したサイバー攻撃について一切非を認めなかった。2014年のウクライナ東部紛争でロシアの民兵や情報機関が暗躍したように、表で無関係を装いながら秘密工作活動をさせるのはロシア政府の常套(じょうとう)手段だ。クリミア併合や反体制派の弾圧についても、プーチン氏は批判を全く意に介していない。

ロシア側は今回の会談にすこぶる満足しており、ロシアが米国の重視する大国であることが示されたと解釈している。プーチン政権が増長し、国内の弾圧や対外的な攪乱(かくらん)活動にさらに力を入れる恐れがある。中国抑止に集中したい米国の思惑を見透かし、対中連携を強めることにも警戒が必要だ。

バイデン氏は米露会談に先立つ先進7カ国首脳会議(G7サミット)と北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、中露に対抗すべく民主主義陣営の結束を固めた。この機運を削(そ)いではならず、ロシアの不法行為には制裁強化などで厳しく対処する姿勢を貫くことが肝要である。

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