US Gross Domestic Product Is Strong, but It Should Watch for Risks to Stable Growth

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米国経済は、新型コロナウイルスの流行による落ち込みから急回復しているが、先行きには懸念も出ている。安定成長に移行できるよう、慎重な政策運営に努めてもらいたい。

米国の2021年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比の年率換算で6・5%増と、4四半期連続のプラス成長となった。伸び率は、1~3月期の6・3%増を上回った。

実質GDPの規模は、コロナ禍前の19年10~12月期を超え、過去最大になったという。

GDPの7割を占める個人消費が11・8%増と高い伸びを示したのが主な要因だ。小売業のほか、飲食業も持ち直している。

 米政府がワクチン接種を強力に進めたことに加え、国民への現金給付、連邦準備制度理事会(FRB)の大規模な量的緩和といった施策が効果を上げたのだろう。

 世界一の経済大国である米経済の回復は、世界経済への波及が大きく、歓迎したい。

 一方、先行きのリスクには注意が必要だ。特に気がかりなのは、インフレである。

 6月の消費者物価指数の上昇率は、前年同月比で5・4%となった。5月の5・0%を上回って、約13年ぶりの高水準だ。

 FRBは、物価の急上昇は「一時的」との認識を示している。経済活動の再開で人の移動が増え、レンタカー代や航空運賃などの値上がりが目立っているためだ。

 だが、原材料価格の高騰などの要因もある。このまま物価上昇が続けば、量的緩和の規模縮小が想定より早まる可能性がある。

 金融市場では、年末から来年初めに緩和の縮小が始まるとの見方が多いが、前倒しされると金融市場への影響が懸念される。

 13年には、当時のバーナンキFRB議長が量的緩和の縮小を示唆したことで新興国の通貨安や株安が起き、市場が混乱した。同様の事態を招かないよう、FRBは丁寧に情報発信してほしい。

 米国ではインド由来の変異ウイルス「デルタ株」の広がりで、感染が再拡大している。再び経済活動の制約に追い込まれれば、個人消費への打撃は避けられない。

 世界的な半導体不足で、製造業が自動車やスマートフォンなどの減産を強いられていることも心配だ。不動産価格の高騰により、住宅投資は急減速している。

 バイデン政権と議会は安定成長に向け、すでに打ち出したインフラ投資や育児・教育支援といった目玉政策の実現を急ぐべきだ。

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