Do Not Abandon Afghanistan to the Taliban Takeover

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バイデン米政権が「米史上最長の戦争」の終結を急いだ代償は、あまりにも大きいと言わざるを得ない。アフガニスタンの混迷の収拾へ、国際社会は迅速に動かねばならない。

アフガンのイスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧した。ガニ大統領は国外に退避し、タリバンが主導する政権が近く発足する見通しとなった。

銃を手にした戦闘員が大統領府の部屋を我が物顔で占拠する映像は、力と恐怖で支配を広げてきた実態を如実に示していると言える。こうした状況で各国から正統性を承認されるだろうか。

タリバンは2001年まで政権を握っていた時も、民主主義の否定や女性への教育禁止など、過激な政策をとっていた。

指導部は今回、住民の財産保護や避難民の安全確保を指示したというが、末端の戦闘員まで浸透させられるかどうかは疑問だ。既に略奪の横行が伝えられている。

国民の多くは世界から見捨てられた思いだろう。米国の協力者やガニ政権の関係者が報復を受けたり、女性への抑圧が強まったりする事態が懸念される。

タリバンの電撃的な攻勢の背景に、アフガン駐留米軍の拙速な撤収があったのは明白である。アフガン政府軍の士気は低下し、戦わずに敗走する兵が相次いだ。

バイデン大統領は先月の段階でも、アフガン政府軍がカブールを防衛できるという楽観的な見方を示していた。確かに兵力数ではタリバンを上回っていたが、戦闘能力を実際に支えていたのは、米軍の空爆や情報提供だった。

米国世論に配慮し、8月撤収に固執したバイデン氏の責任は重い。ガニ政権の統率力欠如や、米国の軍事力を対中国に振り分けたい事情があったとしても「出口戦略」が甘すぎたのではないか。

01年の米同時テロの後、米国はテロ首謀者をかくまっていたタリバン政権を崩壊させ、民主国家の建設を主導してきた。日欧をはじめ多くの国も巨額の資金と人員を投じて復興を支えた。

アフガンが非民主的な体制に逆戻りし、再びテロリストや過激派の温床となれば、20年間の国際社会の努力は無に帰すことになりかねない。アフガンの混乱は国際テロの危険を増大させる。

国連を中心に、関係国が暴力の自制と安定を求め、アフガンへの関与を話し合う枠組みを構築する必要がある。中国とロシアはタリバン支持に傾くのではなく、日米欧と足並みをそろえるべきだ。

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