Revise the Status of Forces Agreement in Light of US Military Release of Contaminated Water

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米軍基地周辺に住む人たちの命と健康に関わる重大な問題だ。基地内での有害物質の保管や取り扱いについて政府や地元の自治体が日ごろから調査、規制できる仕組みが欠かせない。

 沖縄の米軍が、有機フッ素化合物のPFOSなどを含む汚染水を普天間飛行場から公共の下水道に放出した。地元の宜野湾市による放出当日の調査で、国が示した水質管理の目安の13倍を超す高濃度の値が検出されている。

 有機フッ素化合物は、自然界ではほぼ分解されず、環境中に長く残り、人体に取り込まれて蓄積される。発がん性が指摘され、国内では2010年にPFOSの製造や使用が原則禁止された。

 本来は焼却して処分するが、米軍側は時間と費用がかかるとして汚染水の濃度を下げて下水に流すことを日本側に打診していた。県や市が反対し、協議が続いていたにもかかわらず、一方的に放出に踏み切っている。

 しかも、県へ通告したのは放出を始めるわずか30分ほど前だ。放出量はおよそ6万4千リットル。ドラム缶で320本分に相当する。地元の不安を顧みない横暴な振る舞いと言うほかない。政府が強く抗議したのは当然だ。

 汚染物質の漏出事故も相次ぐ。普天間では昨年4月、消火設備が誤作動し、PFOSを含む大量の泡消火剤が住宅地に飛散した。この6月には別の軍施設から汚染水が流れ出した。PCBやダイオキシン類も、基地周辺や返還された跡地で検出されている。

 そもそも米軍基地に有害物質がどれくらいあり、どう扱われているのかを確かめる手だてが日本側にはない。日米地位協定により、基地の管理権は米軍にあり、国内法は原則、適用されない。

 環境対策については15年に結んだ補足協定で、汚染事故に際して基地内への立ち入り調査が可能になった。けれども、応じるか否かを決めるのは米軍だ。拒否されれば日本側は手が出せない。

 基地周辺の汚染は沖縄に限らない。東京にある米軍横田基地の近くでも高濃度の有機フッ素化合物が検出されている。事故が起きたときだけでなく、基地に立ち入り調査ができる仕組みが要る。

 問題の根幹にあるのは日米地位協定だ。ドイツでは駐留米軍に国内法が適用され、立ち入り調査をする権限もある。通り一遍の抗議だけでは、住民の命と健康が脅かされている現状を改められない。政府は、地位協定の見直しを米側に強く働きかけるべきだ。

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