アメリカの「利上げ」に世界が騒然…株式市場に起きる「ヤバすぎる事態」
世界経済へのインパクト
現在、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、これまで経験したことのない金融政策の転換を行おうとしている。
1月25、26日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBは迅速な政策金利の引き上げが適切と表明した。
3月以降、当初の予想を上回るスピードで利上げが進むことが考えられる。
その背景には、FRBが一時的とみてきたインフレ圧力が予想以上にたかっていることがある。
インフレの高進によって、国民の不安が高まっており、FRBとしてもインフレ懸念を鎮静化しなければならない状況に追い込まれている。
これまで世界経済は、今回のような大規模な利上げとバランスシート縮小=流動性吸収の同時進行を経験したことがない。
記者会見でのパウエルFRB議長の発言や身振りを見ると、金融政策の正常化を急がなければならないとの焦りや危機感は相当に強そうだ。
世界の主要投資家の想定を上回るペースでFRBが金融政策の転換に取り組む可能性は高い。
それは世界の経済と金融市場にかなりのインパクトを与えるだろう。
特に、米国の“ミーム銘柄”や新興企業の株価水準はかなり高い。
未経験の金融政策転換のインパクトは資産価格に十分に織り込まれていないと考えられる。
ウクライナ問題、中国の景気減速などの要素も重なると、世界の株式市場は大きく、急速に不安定化することが懸念される。
経験したことのない金融政策の転換
1月のFOMCのポイントは、FRBが利上げとバランスシート縮小を同時に進める決意を表明したことだ。
世界の金融政策の歴史を振り返ると、利上げと流動性の吸収が同時に進んだことはない。
まさに未経験の金融政策の転換が始まろうとしている。
FRBは想定以上に物価の上昇圧力が高まる恐れがあると、今後の経済展開に危機感を強めていると考えられる。
前回の金融政策の正常化は2015年12月までさかのぼる。
当時、FRBは忍耐強く利上げを実施した。2017年10月からバランスシート縮小が開始された。
市場参加者は金融政策の正常化および引き締めに対応するゆとりがあった。
しかし、今回は違う。
2021年12月の米消費者物価指数は前年同月比で7.0%上昇した。
ミシガン大学が公表する消費者のインフレ予想は1月時点で1年先が4.9%、5年先も3.1%とFRBの物価目標水準を上回っている。
それに加えて、労働市場の改善も急ピッチだ。
FRBは超低金利と潤沢な流動性供給を軸とする緩和的な金融政策のスタンスを、利上げと流動性吸収を軸としたものに迅速に転換しなければならない。
3月以降、米国の金融政策は急速に、かつ、大きく変わるだろう。
利上げに関して、FRBはFOMCごとに政策金利であるFFレートを引き上げる可能性がある。
FOMC後、3月に0.5ポイントの利上げが実施されるとの予想が増えるなど、米国経済の専門家は金融政策見通しを大幅に修正し始めた。
FOMCの発表内容を額面通りに解釈すると、5月の会合後に償還を迎えた債券の再投資が停止される可能性がある。
バランスシート縮小の開始タイミングが早まることもあるだろう。
世界的なサプライチェーン寸断によって米国の物価はさらに上昇する可能性がある。
11月には中間選挙が実施される。
FRBはかなり急ピッチに利上げと流動性吸収に着手せざるを得なくなっている。
“ミーム銘柄”などバブル銘柄の大幅な調整も
金融政策の転換によって、これまで急上昇していた米国の株価が下落する可能性は高まっている。
具体的には、ゲームストップやAMCなど、いわゆる“ミーム銘柄”はかなりの値幅で調整する可能性がある。
1月27日のゲームストップ株の終値は93ドル台だった。
同社が赤字に陥っている。
株価はかなり割高に見える。
低金利と過剰流動性が支えたマネーゲームの余韻に浸る投資家は一定数いるようだ。
“特別買収目的会社(SPAC)”にも衝撃が及ぶだろう。
2020年3月にFRBが利下げを行い、大量の資金を金融市場に供給した結果、投資資金はだぶついた。
SPACは余剰な資金の滞留場所となり、それを用いてスタートアップ企業を買収して上場させ、利得を得た。
それも米国の株価上昇を支えた。
事業運営体制に不備があったEVトラック新興メーカーのニコラは代表例だ。
SPACを用いたIPOは急減する恐れがある。
金利上昇によって“グロース銘柄”にも調整圧力がかかるだろう。
成長期待の高さを理由に株価が上昇したテスラやGAFAMなどの先端銘柄に調整圧力がかかる展開は軽視できない。
業績面で健闘している企業はあるが、割高感のある銘柄は多い。
米ナスダック市場の上昇は世界経済の成長期待を支えた大きな要素だ。
IT先端銘柄などの株価が下落すれば、世界的に景況感は軟化するだろう。
米国の金融政策の転換に、ウクライナ問題や中国の景気減速の鮮明化などが重なると、世界の株式市場が大きく不安定化することが懸念される。
その場合、家計の債務残高が増加の一途にある韓国やアジア新興国などから投資資金が急速に流出するだろう。
FRBが急ピッチで金融政策の転換にとりかかろうとしていることは、世界経済と金融市場の変化を加速させる一つのきっかけになる。
その影響は慎重に考えるべきだ。
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