American Fast Reactors Aren’t Worth Ignoring Our Nuclear Fuel Issue

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<社説>米高速炉に協力 核燃問題棚上げするな

日本原子力研究開発機構と三菱重工業などが、米国の高速炉開発に技術協力することになった。

 日本では高速増殖原型炉「もんじゅ」がナトリウム漏れなど相次ぐトラブルで廃炉となり、高速炉の開発は行き詰まっている。

 原発から出る使用済み核燃料を再処理して再利用する核燃料サイクル政策も、想定していた高速炉や一部の原発での再利用が見通せず、事実上破綻している。

 日本側には今回の協力を通じて暗礁に乗り上げた高速炉開発と核燃料サイクルを延命させたいとの思惑が透けて見える。

 政府は核燃料サイクルに早く見切りを付け、普及が急がれる再生可能エネルギーの開発に人材や資金を向けるべきである。

 米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が出資する米新興企業テラパワーが、高速実証炉を米ワイオミング州に建設する。米政府からも資金を得て2024年に着工し、28年の完成を目指す。

 もんじゅ同様に冷却材にナトリウムを使う方式を採用するため、燃料や冷却材に関する日本の知見に期待しているという。原子力機構のナトリウム試験施設「アテナ」の活用も検討されている。

 だが高速炉を長年研究してきたフランスは採算や安全性などの面から開発を凍結しており、米の計画も課題は尽きまい。

 高速炉は燃料を効率良く燃やすことができ、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を減らす効果があるとされる。さらに日本側は今回の協力の意義として、脱炭素への貢献も打ち出した。

 ただ政府はもんじゅの後継高速炉について、本格利用の開始は今世紀後半としてきた。

 日本は50年の温室効果ガス排出実質ゼロを目指しており、これでは喫緊の課題に対応できず、協力の意義は見えない。

 気になるのは、今回の協力を機に国内の高速炉開発を再び推進しようとする動きがあることだ。

 原子力機構はナトリウム試験施設の設備を拡充するほか、停止中の高速実験炉「常陽」の早期再稼働に向けて準備を進めている。

 1兆円以上を投じたもんじゅの失敗を忘れてはなるまい。高速炉開発への固執は、新たな国民負担を招くことにもなろう。

 日本がいま全力を挙げなければならないのは、洋上風力を中心とした再生エネの拡大だ。

 将来の見えない国内の高速炉開発に、貴重な時間も資金も費やす余裕はないはずである。

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