社説:オスプレイ 市街地飛行に不安強い
「これで安全が保証できるかというとできない」「安全は政府が保証に近い形でやってもらわないと」
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備について、仲井真弘多沖縄県知事は、先月29日の森本敏防衛相との会談で「安全の保証」を5回繰り返した。政府はこれにどう応えるのだろうか。
会談は、今年4月にモロッコで起きたオスプレイ墜落事故に関する日本独自の検証結果を説明するため、防衛相の求めで開かれた。機体の問題ではなく、人為的なミス−−米軍の調査結果を追認する内容である。知事の結論は「今の段階で(配備)受け入れは難しい」だった。
仲井真知事は会談後、記者団に「安全の保証」と「住民の不安の払拭(ふっしょく)」が前提になると強調し、「こういうものがない限りとてもオーケーとは言えない」と述べた。
一方、米軍は6月に米フロリダ州で起きた空軍のCV22オスプレイ墜落事故も人為ミスと発表した。
人為ミスをいくら強調しても、日本政府が安全を保証することにはならない。事故の可能性は常にあり、米軍も事故率を算出している。配備が計画されている米軍普天間飛行場の周辺住民の不安は消えない。
問題はオスプレイを市街地の上空で飛行させることだ。宜野湾市の中心部にある普天間飛行場の周囲には約9万人が居住し、学校、病院など120以上の公共施設がある。万一のことがあれば重大事故となる。03年11月、同飛行場を上空から視察したラムズフェルド米国防長官(当時)は「こんなところで事故が起きない方が不思議だ」と語った。
「10月配備(本格運用)」を進める野田政権は、住民の安全より米政府とのあつれき回避を優先しているとしか思えない。普天間移設の動きは止まったままだ。移設実現までの普天間飛行場の機能分散と、10月配備の延期を改めて求める。
森本防衛相は30日には、オスプレイが一時駐機している米軍岩国基地がある山口県を訪れ、山本繁太郎知事と会談した。知事は「住民の安心と安全は十分でない」と語った。
米海兵隊は最近、ハワイの二つの空港で計画していたオスプレイの訓練を中止した。空港周辺の歴史的遺産への影響や住民の騒音被害などを考慮したためという。6月には、ニューメキシコ州で、空軍が、環境アセスに対する住民意見を受けてオスプレイの低空飛行訓練を延期している。
米国内なら柔軟に対応するが、日本ではそうはいかないということなのか。仲井真知事は会談で「(市街地の)普天間でオスプレイが飛び交うイメージは浮かびにくい」と語った。配備を強行してはならない。
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